類まれにみる天才
今回の題名になっている2人の共通点。
それはともに類稀に見る天才だということです。
佐々木選手は高校時代に163kmの速球を投げたことで一躍注目を浴び、プロ野球3年目の今年は4月10日(日)の楽天戦で完全試合、その1週間後の4月17日(日)の日本ハム戦でも8回を完全に押さえています。歴史あるプロ野球ですが、彼ほどの力と才能をもった選手は今までいなかったかもしれません。
不破選手は拓殖大学の2年生。中学時代に日本一、高校3年時にクロカンで高校日本一になるなど注目はされていましたが、その存在が全国的に知られたのは全日本大学女子駅伝でしょう。エース区間の5区9.2kmを28分ジャストで走りました。これは10kmなら30分台は間違いない記録。実際にその後の1万m記録回で30分45秒の日本歴代2位で走っています。このような活躍から、パリ五輪の星として注目を浴びています。
才能の代償
大いなる力には大いなる責任が伴う。
これはスパイダーマンのおじであるベン・パーカーの有名なセリフです。これは何もスパイダーマンのようなスーパーヒーローのみならず、誰にでも当てはまるものです。大きな才能がある人には、それを行使する限りは、本人が望む望まないに関わらず、才能の大きさに比例した責任(苦しみ)がつきまとうのです。
佐々木選手、不破選手という大いなる才能の持ち主にとっての責任とは「怪我との戦い」でした。
出力の高さ、佐々木選手でいえば球の速さ、不破選手でいえば走るスピードと維持する力、に身体の成長が追いついていない結果、出力の身体にかかる負荷が大きくなり故障のリスクが高まるのです。どんなに素晴らしい才能も、怪我をしてしまい発揮できないとなると宝の持ち腐れです。
佐々木選手の場合
佐々木選手の場合はそういうことにならないように一見すると過保護に思えるくらい大事に育てられたのがわかります。高校3年時の岩手県大会決勝で投げなかったこと、プロ1年目は一投もせずにカラダづくりに専念したこと(吉井コーチ曰く「放牧」)、プロ2年目は中10日で投げさせ、3年目の今年も目先の結果より将来と無理はさせようとしていません。
将来メジャーリーグでも活躍させるため・・・というよりはとにかく佐々木選手を怪我させないというのが大きいでしょう。これからも大事に大事に怪我しないように育てられるのだと思います。
不破選手の場合
不破選手は高校時代に度重なる怪我によって苦しんでいました。食事の大事さを理解する拓殖大学の五十嵐監督のもと貧血や故障を克服し、走れるようになりますが不破選手の才能は五十嵐監督の想定を遥かに上回っていた可能性があります。それが理由で怪我をして先日の学生個人選手権のようになったのではと思います(5千mに出場も17分半で最下位)。
ネットをみると色々酷いことが書かれていますが、僕は五十嵐監督じゃなければそもそも不破選手がここまで走れるようになったとは思わないし、彼女のような才能の持ち主なんて今までの陸上界でそうそういないわけなので適切に指導すること自体が高難度なのです。五十嵐監督は不破選手のことを大事に育ててきたのですが、いかんせん不破選手の才能と走りが五十嵐監督の想定の斜め上をいっていたということが今回の故障につながったと思います。
不破選手をみていて思い出すのが、かつて高校生ながら世界陸上1万mに出場した絹川愛さん。彼女も素晴らしい才能の持ち主でしたが、不破選手同様に身体の強さが追いついておらず結局本来の才能を発揮できませんでした。不破選手は果たしてどうなるのか・・・5月の日本選手権は走るのか・・・、色々思うことがあります。
天才の育て方
佐々木選手と不破選手をみて思うこと。それは、才能ある選手を育てるにはまず基礎(身体)を丈夫にしなければいけないこと。才能が大きければ大きいほど、その作業は入念にする必要があります。2人はその点では素晴らしい指導者と巡り合うことができました。
今、そして今後と才能ある選手が出てきたときに指導者と保護者に求められるのは目先の結果を追うことではなく、先を見据えひたすら基礎を丈夫にしていくことです。子供は長期的視野をもっていません。だからこそ大人たちがそこをフォローしてあげる必要があります。