本日開催された名古屋ウィメンズマラソンの感想を書いていきます。
はじまるまえは
レース開始前は気温が高い(最高で20度と言われていた)こともあり、高速レースにはならないのではと思っていました。たとえハイペースで進んだところで後半の落ちがすごいだろうと。
有力選手とみられていたケニアのチェプンゲティッチ(ドーハ世界陸上金)とイスラエルのサルピーター(東京マラソン2020優勝)が暑さゆえに牽制しあい最後までレースがもつれ、そこであわよくば安藤選手(ワコール)が抜け出す。そういう展開もあるのではと思っていました(賞金25万ドルもかかっていたため潰れるわけにはいかず、落ち着いていく可能性が高いと思っていました)。
ところがレースがはじまると、全く違う展開が待っていました。
チェプンゲティッチ vs サルピーター〜世界レベルの争い
レースが動いたのが5km過ぎ。チェプンゲティッチがペースが遅いと判断したのか1人抜け出します。そこから3分15秒あたりのペースでずっと走り、サルピーター、安藤、細田(エディオン)をおいていきます。途中200m以上の差がついたでしょうか?定点では49秒差がマックスで230mくらいです。それでは駄目だと、サルピーターが20kmあたりから飛ばします。15kmから20kmまでの5kmが16分16秒なのに対し、20kmから25kmが15分59秒!日本人じゃありえない、世界トップクラスの選手のみに可能な5km15分台ラップを記録します。
そんな感じでどんどんチェプンゲティッチとサルピーターの差はどんどんつまり、30km通過地点で4秒。ついに追いつきました。
ここでサルピーター有利かと思いきや、その後の33.5kmの坂でチェプンゲティッチがスパート。サルピーターはここに対応する力がなくもう追いつくことができませんした。サルピーターにとっての誤算は、チェプンゲティッチがまだ力を残していたということでしょう。もう1つ誤算があるとすれば、おそらくサルピーターがコースを把握していなかったということ(ケニア人選手あるある、サルピーターはケニア出身)。最短距離をとらなかったり、上りがあるにも関わらず、それまでに力を使ったりと。どうせ追いつく力があるのなら、もっと時間をかけて、例えば39km地点くらいで追いついても良かったのではと思うのです。
結果的には2時間17分18秒で優勝したチェプンゲティッチの圧勝でした(とはいってもサルピーターも2時間18分45秒、安藤選手とは後半のハーフで3分30秒、およそ1km差をつけています)。先週の東京マラソンのコスゲイに続き、ハイレベルなレースとなり見応え抜群でした。
今回チェプンゲティッチ、サルピーターに力負けした安藤選手は間違いなく日本人トップクラスの力の持ち主です。松田選手(ダイハツ)、一山選手(ワコール)、新谷選手(積水化学)、そして今回の安藤選手が現時点での日本人4強です。そんな選手ですら、世界トップの選手を前にさっぱり歯が立たなかったのはショックでした。
日本人選手の走り
とりあえず世界との差を感じすぎた今回の名古屋ウィメンズですが、10人が2時間28分を切るなど、暑さによる悪影響を感じさせないレースとなりました。その中でも気になった日本人選手の感想です。
- 安藤友香選手。気温が低ければ2時間20〜21分30秒くらいになっていたかもしれません。安定感はついてきましたが、課題としては後半のペースアップができないこと。2020年の名古屋は比較的良かったですが、挑戦しているマラソンは大体後半で失速しています。”速さ”はもうすでにみせているので、次は”強さ”を見せていってほしいです。ちなみに駅伝1区で区間賞をとるなど、元々はすごい強さももっています。
- 細田あい選手(エディオン)。果敢に先頭集団につき、20km地点くらいで遅れましたが、その後もレーエをやめずにゴール。2時間24分台と自身の記録を2分更新する自己ベスト。着実に強くなっているので、まだまだチャレンジしてほしいです。
- 鈴木優花(大東文化)。ダイハツの前田選手が持っていた学生記録を更新する2時間25分2秒。40kmあたりでペースダウンしていたので、今後の練習でそこを克服できるか?
- 岩出玲亜選手。2時間27分3秒でMGC出場権獲得。20kmあたりで第3集団から遅れるも、そこから驚異的な粘りを発揮し今までの岩出選手とは違う一面をみせてくれました。
今後
大阪国際、東京、そして名古屋とこの冬のJMCシリーズ、そして今夏の世界陸上の代表選考レースが終了しました。全体的に記録の向上がみられた一方、海外トップの練習たちとの差も浮き彫りになりました。速さを追い求めながらも強さも求める。それが今後の鍵になります。
とりあえず男女ともに世界陸上とアジア大会の代表は近々発表されるでしょう。前回のドーハ世陸がMGCがが同時期にあった関係でベストメンバーを揃えられなかったので、今回はベストメンバーが世陸でどういう走りをするのか、楽しみです。